【ヨガの八支則】
「ヨガ」というと、身体を動かす「ポーズ」(アサナ)を思い浮かべる方がほとんどだと思います。ヨガを続けていると、身体が楽になるだけでなく、心がスッキリ軽くなったり、穏やかになる、といったように心への良い変化も感じられる方が多いのではないでしょうか。
ヨガとは、アサナだけを指すのではなく、私たちがより良く生きていくために大切なエッセンスが詰まった「心の科学」だからなのです。
さて、今回は最も有名なヨガ哲学のひとつ「ヨガの八支則」について、ご紹介します。
ヨガの実用書『ヨガ・スートラ』
「ヨガの八支則」は、紀元前後にインドの哲学者パタンジャリによって書かれた聖典『ヨガ・スートラ』に取り上げられています。聖典というと、現実離れした理解しがたい物のように感じられるかもしれませんが、『ヨガ・スートラ』は、ヨガを深めるための手段が体系的に記されている技術書・実用書です。
数千年前の聖者の知恵が、師から弟子へ、弟子からそのまた弟子へと受け継がれ、いま現代を生きる私たちがそれを学んでいる事は、とても感動的ですね。
近年、脳科学が発達し、ようやくヨガの効果が科学的に立証できるようになってきました。
ヨガ実践の8つのステップ
「ヨガの八支則」(Ashtanga yoga)
これは、ヨガを実践するうえでの8つの段階・行法を示しています。
1、 ヤマ Yama (禁戒)
日常生活で慎むべき行為のこと
2、 ニヤマ Niyama(訓戒)
自分自身とのより良い関係を構築するために、進んでやるべき自己鍛錬。
3、 アサナ Asana(座法)
瞑想に適した安定かつ快適な座法を身に付けるための練習のこと。肩・首にコリがあったり背骨をまっすぐに引き上げる体幹の筋力がなくて、集中して何時間も座る事が出来るでしょうか。私たちが練習しているハタヨガは、瞑想に向かうための強さと柔軟性を合わせもった身体を作るために生み出されました。
4、 プラーナヤーマ Pranayama(呼吸法・調気法)
プラーナとは生命エネルギーのこと。アーヤーマは、「調整する」「コントロールする」という意味です。単に二酸化炭素と酸素の交換ではなく、吸う息・吐く息をコントロールすることによって、目に見えない生命エネルギー(プラーナ)を調整し、プラーナの調整によって心を整えます。
5、 プラティヤハーラ Pratyahara(制感)
外界の情報をキャッチする五感を制御し、内側に意識を向けること。感覚器官が様々な刺激に支配されてしまうと、心は乱れます。感覚を制御することで、心は穏やかさを取り戻し、深いリラクゼーション状態になります。「じっくりヨガ」で行っているヨガニドラは、この制感の練習です。
6、 ダーラナ Dharana(集中)
あちこちに彷徨いやすい心を一つの場所や対象物において、瞑想に向かうための訓練をすること。地震が起こっても、気づかないレベルの集中力と言われています。
7、ディヤーナ Dhyana(瞑想)
途切れのない連続した集中状態が続くこと。一時的に、サマディを感じます。
私たちが普段練習する瞑想は、ダーラナの訓練であり、ダーラナが絶え間なく続けば、時間と空間を超え、心は身体感覚を超えることができます。
8、 サマディ Samadhi(三昧)
ヨガの最終段階。瞑想が永遠に続く状態。自分の魂に到着すること。自分が瞑想しているという意識すらなくなり、対象と一体化します。これは、努力してできることではなく、突然訪れるといわれています。
どうでしょう?
何か気づくことはありましたか?
そうです、私たちが練習しているアサナは、8段階中の3番目。分かりやすいように「ポーズ」と訳されることが多いですが、アサナとは、あくまでも、安定して快適に“座る”ための練習なのです。
このアサナができる、できない、という事に一喜一憂し、それに心を奪われてしまう事は、ヨガ本来の目的からずれてしまう事になります。
そして、アサナの前にある「ヤマ」「ニヤマ」は、日々の社会的・個人的行動規範となり、もっとも基本的かつ実践するのが難しいとも言える教えです。
次回は、この「ヤマ」「ニヤマ」を取り上げます。